「この道しかない」をやめた日 ― キャリアをA/B/Cの複数プランで持つようにした話

「答えを一つに決めて走り続ける」という進め方をやめ、キャリアをA・B・Cの複数プランで持ち、状況に応じて比重を動かすようにした話。

どうも、ゆきひろです。

2026年6月のある日、キャリアについてずっと感じていた息苦しさの正体が、ようやく言葉になりました。「答えを一つに決めて、そこに向かって走り続ける」という進め方そのものが、自分を削っていたのではないか、という気づきです。

この15年、仮説でもいいから自分の中で答えを出し、そこに向かって一直線に走るというやり方を繰り返してきました。それが「作品」と呼べるような仕事を積み上げる原動力になってきたのは間違いありません。ただ同時に、見える範囲が広がるほど難易度も上がり、「この道を進んだら、あちらの選択肢とは矛盾する」という分岐が増えていく感覚もありました。蓄積した疲労が、ここにきてようやく表面化してきたのだと思います。

皆さんは、キャリアについて「これしかない」という一本道の感覚を持っていないでしょうか。転職か残留か、独立か安定か。二択で迫られると、選ばなかった方への未練や不安がずっと頭の片隅に残り続けます。今回はその感覚を手放すまでの過程を書いてみます。

【単線思考の限界】一本道の先にあった疲労

これまでのキャリアの進め方は、白か黒かの二択でアクセルを踏み続けるようなものでした。仮説を立て、それを正解だと決め、迷いを振り切って走る。この姿勢は達成感をもたらしてくれる一方で、「この道で本当に良かったのか」という自問をどこかに封じ込めながら進むことでもありました。

見える景色が広がるにつれ、選べたはずの別の道が視界に入ってくる回数も増えていきます。それを「まだ見ぬ可能性」として楽しめれば良いのですが、実際には「今この道を選んでいる自分は、あちらを捨てている」という喪失感として積み重なっていったように感じます。これが15年分たまると、思った以上に重いものになっていました。

【育児ではすでにやっていた】発想の転換点

この行き詰まりを抱えたまま日々を過ごしていたとき、ふと気づいたことがあります。育児では、こんな単線思考は一度も採用していなかった、ということです。

「今日は公園に行く」と決めていても、雨が降れば室内遊びに切り替えます。子どもがぐずれば予定していた順序をあっさり変えます。「これしかない」ではなく、複数の選択肢をあらかじめ頭の中に持っておいて、状況を見ながら比重を動かす。これは特別な工夫として意識していたわけではなく、育児という予測不可能な変数だらけの営みの中で、自然に身についていたやり方でした。

一方で仕事は、変数がないかのような前提で一本道を進んでいました。子育てではとっくに実践していた発想が、なぜか仕事のキャリアには応用されていなかったのです。この非対称さに気づいたとき、進むべき方向がはっきり見えた気がしました。

【ABCプランの中身】比重を動かせる複数プラン

そこで採用したのが、A・B・Cという複数のプランを同時に持ち、状況に応じて時間とエネルギーの配分を動的に変えるという発想です。対極の株を分散して持っておくような、時間配分におけるリスクヘッジと言えるかもしれません。

現時点での比重は次のように置いています。

  • プランA(80%): 会社員継続 × 副業拡大。今、実際に走っている本命の方向性
  • プランB(15%): コンサル系転職。部署異動や環境変化があれば比重を上げる候補
  • プランC(5%): フリーコンサルとして独立。副業の実績が積み上がった先に見えてくる選択肢

大事なのは、この数字が固定ではないという点です。プランAの見通しが悪化したと感じれば、Bへの配分を増やす。逆にAが順調であれば、そのまま80%を維持する。濃度をグラデーションで調整する発想に切り替えたことで、「この道が崩れたら全部だめになる」という重さがだいぶ軽くなったように感じています。

プランAの核にあるのは「本物の仕事の場を副業に作る」という考え方です。会社の中では他者の行動を変えることの難しさをすでに実感しており、動かせない場所でヤキモキし続けるより、副業という自分の裁量が及ぶ場でちゃんと仕事をしたい、という判断が土台にあります。

プランCの独立については「さすがにないだろう」というのが正直な感覚です。会社はインフラ系で事業が傾く可能性は高くないため、移行トリガーは「副業収益が安定化する」「本業の事業が傾く」という2条件が重なった場合に限定しています。今は5%という控えめな比重ですが、副業の実績が積み上がるにつれて、この数字が自然と動いていく可能性は残しておきたいと考えています。プランBについても移行トリガーは3条件(想定外の部署への配属、AI利用ができない環境になる、実行できず社内調整ばかりになる)が重なった場合とあらかじめ決めておくことで、感情に流されて比重を動かすことを防いでいます。

【プランBの15%の正体】自分に向き合う15%

プランBの転職を15%残しているのは、会社への不満から来ているわけではなさそうだ、という点も見えてきました。むしろ「足りていない部分が多く見える」という、自分のハードル設定の癖から来ている比重なのではないかと感じています。

他の人の話を聞くと、実際には十分やれているのに、自分だけが求めるレベルを上げすぎているのかもしれない。この15%は、環境を変えれば解決する類の悩みではなく、自分自身の受け止め方を変えることで下げていける比重なのだと捉えています。転職しても悩みの構造そのものは変わらないという前提を持ちつつ、それでも保険として残しておく。そのくらいの距離感がちょうど良いように思います。

【悩む範囲は自分の権限内だけ】という哲学

このABCプランを支えているもう一つの発想が、「悩む範囲は自分の権限内だけに絞る」という原則です。権限がある混沌は、構造化することで自分の活力源に変えられます。一方で権限がない混沌は、いくら悩んでも解決できず、消耗するだけです。

会議で違和感を覚えても、自分の権限の外にあることであれば、コメントは一言だけ方向性を促す程度に留め、それ以上は追いかけません。集中力を10〜20%程度に抑え、残りのエネルギーは副業や学びに配分する。これは諦めではなく、エネルギーの最適配分だと捉え直すことで、無理なく続けられる感覚に変わりました。

実践に落とし込む

考え方を変えただけでは意味がないので、日々の判断にどう使っているかも書いておきます。

  • 週の始めに、A・B・Cそれぞれへの時間配分を大まかに見直す
  • モヤモヤした出来事があったら「これは自分の権限内か」を一呼吸置いて確認する
  • プランBの15%が膨らんできたと感じたら、それが環境要因なのか自分のハードル設定なのかを切り分ける
  • 副業の手応えが積み上がってきたタイミングで、Cへの比重を少しずつ見直す

まだ運用を始めたばかりで、正直なところ本当にこれで良いのか分からない部分もあります。それでも、一本道を走り続けていた頃に比べると、選ばなかった道への未練を抱え込む時間は減ってきたように感じています。

おわりに

15年かけてようやく、育児でとっくにやっていたことを仕事にも応用できるようになった、というだけの話かもしれません。それでも「この道しかない」という思い込みを手放し、比重を動かせる複数のプランを持つという発想は、キャリアに限らず、色々な場面で使えるのではないかと思っています。

組織の中で消耗しながらも前向きに考えている方にとって、この記事が少しでも肩の力を抜くきっかけになれば嬉しいです。